「新しいものをつくるのが好き。でも、コレだ!と完璧に思えるものを作れる機会は、一生に一度あるかないかじゃないですかね」
そう語るのは、サッシ開発部・開発リーダーの上田武司。入社1年目から開発畑一筋に歩んできた男にとって、ものづくりはまさに人生を賭けた真剣勝負だ。
そんな上田が、「一生に一度あるかないか」というくらい全精力を傾けた製品があった。高性能ハイブリッド窓『サーモスX』である。
「住宅で最も熱が出入りするのは、窓などの開口部なんです」「だから、窓に高断熱の商品を使えば、もっと部屋は快適になるし、省エネになる」と上田は言う。2020年にすべての新築住宅に“省エネ”が義務化されることもあり、より一層断熱性の高い窓を開発することは、社としても急務であった。
しかし、断熱性だけではダメだ。家は今も昔も人生の大きな買い物、そして大きな「夢」だ。機能ばかりが優れていても、デザイン性が伴わなければ消費者は納得しない。
断熱性とデザイン性、どちらも極限まで追求した商品を開発したいと上田は常々考えていた。
─アルミ樹脂複合サッシへのチャレンジ─
樹脂の優れた断熱性に、意匠性、耐久性に優れ、外側にシャッターや格子をつけるなど、拡張性も高いアルミを合わすことができれば、理想的な窓ができるはず。
上田はプロジェクトをスタートさせた。
「そんなものを作る必要があるのか?」プロジェクトの船出は、決して順風ではなかった。当初社内では、「樹脂サッシでいいじゃないか。十分暖かいし、お客様に説明もしやすい。」と開発に難色を示す人が少なからずいた。
「断熱性だけを考えると、確かにそうだ。しかし…」 日本の風土、気候を考えると、アルミと樹脂の複合サッシで実現することに意義がある。そう確信していた上田は社内を走り回り、説得していった。
その意義とは─
耐久性、強度の優れたアルミで室外側を構成することで、枠材を小さくできるので、よりガラス面を大きく、部屋を明るくすることができる。そこに樹脂の断熱性が加われば…寒暖の差が大きい日本の国土では、長年培ってきたアルミの耐候性、耐久性が求められるはずだ。アルミ樹脂複合サッシの技術は自社の強みだから、これを伸ばすことが会社の未来にもつながる
─その熱意はやがて反対の声を抑え、かえって「やろうじゃないか」という賛成の声に転じさせた。
「結局は、“良いものを作りたい”という気持ちが、全員の中にあったんだと思います。チャレンジ精神がうちの社風ですからね」
「そんなものを作る必要があるのか?」プロジェクトの船出は、決して順風ではなかった。当初社内では、「樹脂サッシでいいじゃないか。十分暖かいし、お客様に説明もしやすい。」と開発に難色を示す人が少なからずいた。
「断熱性だけを考えると、確かにそうだ。しかし…」 日本の風土、気候を考えると、アルミと樹脂の複合サッシで実現することに意義がある。そう確信していた上田は社内を走り回り、説得していった。
その意義とは─
耐久性、強度の優れたアルミで室外側を構成することで、枠材を小さく
できるので、よりガラス面を大きく、部屋を明るくすることができる。そこに樹脂の断熱性が加われば…寒暖の差が大きい日本の国土では、長年培ってきたアルミの耐候性、耐久性が求められるはずだ。アルミ樹脂複合サッシの技術は自社の強みだから、これを伸ばすことが会社の未来にもつながる
─その熱意はやがて反対の声を抑え、かえって「やろうじゃないか」という賛成の声に転じさせた。
「結局は、“良いものを作りたい”という気持ちが、全員の中にあったんだと思います。チャレンジ精神がうちの社風ですからね」
試行錯誤を繰り返し、どうにか完成が見えてきたころ、上田たち開発チームはまたもや壁にぶつかった。それは、窓にとって宿命ともいえる「結露の壁」だ。わずかではあったが、防露性が樹脂窓と比べ、劣っていることが発覚したのである。
「アルミ窓より当然高い防露性は確保し、社内基準もクリアしていました。しかし……」
どんなに防露性能が高くても、室内環境によっては結露ができてしまう場合がある。しかし、それが仕方のないことだとお客様に納得してもらうには、「他社よりウチの方が性能的に上」という説得力が必要だ。
「だからこそ、絶対に負けたくなかった」
上田は、発売3ヶ月前のタイミングであったが、設計変更に踏み切る決意をした。
発売3ヶ月前といえば、工場の製造設備も整いつつあるころ。そこに設計変更となれば、工場側も大きな見直しを強いられる。
上田は工場長に頭を下げた。
「ものすごく怒られましたよ(笑)。“目標設定が甘い!”とか、“どんな管理をしてるんだ!”とか……。でも、 最終的には“いいものを作るためなら仕方ない”と納得してくれました。最高のものを作ろうという意識は、すでに共有できていましたからね」
そして、プロジェクトのスタートから2年あまりついに上田たち渾身の「サーモスX」は、世に送りだされたのである。
試行錯誤を繰り返し、どうにか完成が見えてきたころ、上田たち開発チームはまたもや壁にぶつかった。それは、窓にとって宿命ともいえる「結露の壁」だ。わずかではあったが、防露性が樹脂窓と比べ、劣っていることが発覚したのである。
「アルミ窓より当然高い防露性は確保し、社内基準もクリアしていました。しかし……」
どんなに防露性能が高くても、室内環境によっては結露ができてしまう場合がある。しかし、それが仕方のないことだとお客様に納得してもらうには、「他社よりウチの方が性能的に上」という説得力が必要だ。
「だからこそ、絶対に負けたくなかった」
上田は、発売3ヶ月前のタイミングであった
が、設計変更に踏み切る決意をした。
発売3ヶ月前といえば、工場の製造設備も整いつつあるころ。そこに設計変更となれば、工場側も大きな見直しを強いられる。
上田は工場長に頭を下げた。
「ものすごく怒られましたよ(笑)。“目標設定が甘い!”とか、“どんな管理をしてるんだ!”とか……。でも、 最終的には“いいものを作るためなら仕方ない”と納得してくれました。最高のものを作ろうという意識は、すでに共有できていましたからね」
そして、プロジェクトのスタートから2年あまりついに上田たち渾身の「サーモスX」は、世に送りだされたのである。
新しいものをつくるのが好き─冒頭、そう話した上田。しかしそれは、「暮らしに役立つものでなければ意味がない」という。
「暮らしとは、人生の基礎。安らぎであり、守っていかなければならないもの。それをベースに、仕事や趣味がある。そしてそれは、快適なものであってほしい。さらには、それを支えるのが”LIXILがつくるもの”であってほしい」
上田たちの“快適な暮らし”を求める「挑戦」は、これからも続く。